電話やメール、メッセージのやり取りをするのに今や必需品となったスマートフォンや携帯電話。特にスマートフォンは普及率が7割以上と多くの国民が有しており、日常生活に無くてはならないものになっている。
そんなスマートフォンは、病院に行くときにも当然必須のアイテム。しかしここで気になるのは、待合室や診察室、病室でのスマートフォンの使い方。通話はしてもOK?診察では電源を切る?病室では使える?
ここでは意外と曖昧な病院でのスマートフォン・携帯電話の使用ルールを、厚生労働省・総務省が策定した指針をもとに解説する。
結論
結論から言おう。
各病院で定められたルールに従うことを大前提として、病院内では一部を除きスマホや携帯電話は使用できるとの指針(ルール策定指針)が出ている。
2014年10月、総務省・厚生労働省は、「医療機関における携帯電話等の使用に関する作業部会」を設置していた電波環境協議会が「指針:医療機関での携帯電話等の使用指針について」を策定したことを公表した。
この中で、参考事例としてエリアごとのルール設定が以下のように公表されている。
場所 | 通話等 | メール・Web等 | ルール設定の考え方、留意事項 |
(1)食堂・待合室・廊下・エレベーターホール等 | ○ | ○ | ・通常は医用電気機器が存在しないため使用可能 ・医用電気機器からは設定された離隔距離以上離すこと ・使用が制限されるエリアに隣接する場合は,必要に応じ,使用が制限される ・歩きながらの使用は危険であり,控えること |
(2)病室等 | △ | ○ | ・通常使用されている医用電気機器は限定されており,影響の程度は比較的少ないと考えられるため使用可能 ・医用電気機器からは設定された離隔距離以上離すこと ・多人数病室では,通話等を制限するなどのマナーの観点からの配慮が必要 |
(3)診察室 | × | △ | ・使用されている医用電気機器の多くは診断用装置であり,診察室は医療従事者の管理下にあるため,電源を切る必要はない(ただし,医用電気機器からは設定された離隔距離以上離すこと) ・診察の妨げ,他の患者の迷惑にならないよう,使用を控えるなど の配慮が必要 |
(4)手術室,集中治療室(ICU等),検査室,治療室等 | × | × | ・生命維持管理装置など,万一影響が発生した場合のリスクが非常に大きいものが多くあるため使用しないだけでなく,電源を切る(または電波を発射しないモードとする)こと |
(5)携帯電話使用コーナー等 | ○ | ○ | ・利用者の利便性・生活の質の向上のため,適切な場所に設けられることが望ましい。 |
注意事項
各病院のルールに従うこと
先述したとおり上記指針はあくまでルール策定のための指針であり、スマートフォンの使用は各病院のルールが適用される。
医療機器への影響のほか、呼び出し音や通話による他人への迷惑等のトラブルに発展しないよう各人は注意する必要がある。
なお、電波環境協議会が実施した医療機関878病院を対象にしたアンケートでも、携帯電話を使用禁止にしている理由として上記が半数以上の割合を占めている。
輸液ポンプや補助人工心臓へ影響が出ることも
本指針の策定にあたり、電波環境協議会が3G・4G(WCDMA・LTE通信)相当の実験環境で医療機器への影響を実機調査したところ、以下の影響が確認された。
医療機器種類 | 影響 | 発生最大距離 |
汎用輸液ポンプ | ・エラー表示や警告音を発し,輸液が停止 | 18cm |
注射筒輸液ポンプ | ・エラー表示や警告音を発し,輸液が停止 | 15cm |
血液浄化装置 | ・エラー表示や警告音を発し,運転停止 ・警告音等無く,補充液量が増加 | 8cm 2cm |
体外式ペースメーカ | ・ペーシング機能への影響 | 2cm |
補助人工心臓駆動装置 | ・表示波形等がやや乱れた | 3cm |
携帯電話の電波の医用電気機器への影響調査
・医用電気機器,携帯電話端末とも影響を発生させやすい最悪条件にして実験を行った結果,一部の医用電気機器では,携帯電話をごく近接して使用した場合には,診療行為に影響を与える事象が発生する場合があることが確認された。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000328162.pdf
・医用電気機器への近接,特に,上部に携帯電話端末を直に置くなどの行為は禁止される必要がある。
・一方,一定の距離を確保すれば,影響は発生しなかった。
ルールを違反した場合、上記のような致命的な影響をもたらす場合がある。
なお、近年普及した5Gによる影響はここでは調査検討されていないが、同様の影響が発生することが考えられる。一人一人が必ずルールに従ってスマートフォンを使う必要があるだろう。
なおルールを破った場合は、強制退院させられたり、何かしらのペナルティが発生する場合がある。入院誓約書等の書面にも記載されているため、患者・面会者ともに注意しよう。
なお、本記事は執筆時点で最新の情報をもとに記載しているが、病院でのスマートフォン使用の際は各病院のルールおよび最新の指針を改めて確認していただきたい。
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